認知行動療法(CBT)の役割と大人のADHD対処法
ADHDの核症状を治療するための第一選択として薬物治療が考えられます。脳機能に影響を与える様々な薬物治療があり、持続的な注意力の改善、気晴らしの管理、衝動制御の改善などが期待できます。
しかし、適切な薬物治療を受けていても、ADHDの影響に苦しむ人々がいます。つまり、ADHDの残存症状を経験し続ける人々や、彼らが有用だと知っている対処戦略を実行するのに困難を感じる人々がいます。
さらに、ADHDの人々は、日常生活での感情管理に苦労することがあります。これは、ADHDの特徴としてますます認識されています。
認知行動療法と日常生活
認知行動療法は、上記で述べた大人のADHDに関連する障害や対処問題を直接対象とする補助的な治療法として有用であることがわかっています。
対処策は単純に見えますが(例えば、毎日のプランナーを使う、タスクの期限よりも早く作業を始める、大きなタスクを小さなタスクに分割するなど)、それらを実装するのは難しいことがあります。
時間管理の問題とその解決策
例えば、「時間管理が悪い」という問題を抱えている患者が初回のセッションに遅れて来るという状況を考えてみましょう。
このような出来事は、「時間管理が悪い」という問題の様々な要素を「逆算」するための機会となります。
これにより、ADHD(および他の要因)が機能的な問題の発生と維持にどのように寄与しているかを理解し、対処戦略の初期のアイデアを提供することができます。
例えば、「時間管理」に関連する問題がいくつかあります。
- スケジュール管理が不十分(例:予定の記録がない日常のプランナー)
- 無秩序(例:予定日と時間が書かれた紙が見つからない)
- 問題解決能力が不十分(例:予定時間を得るためのオプションを考えることがない、オフィスの番号を調べて確認の電話をするなど)
- 計画性が不十分(例:予定に出かけるための現実的な時間枠を設定しない、移動、駐車などを考慮しない)
- 集中力が散漫(例:コンピュータで作業をしている)
これらの「時間管理が悪い」要素それぞれが、変化の機会を提供します。
ADHDに関連する様々な困難が特定されると、再発するテーマが出てきます。そして、話し合った様々な対処スキルが、全体的な機能を改善するために様々な状況に適用できます。
認知行動療法による行動の変化
認知行動療法では、具体的な行動の変化を目指します。それは、問題のある行動パターンを特定し、それを改善する新しい行動を学ぶことを含みます。
このプロセスは、患者自身が自分の行動を理解し、それを変えるための具体的なスキルを身につけることを可能にします。
先延ばし問題とその対処法
先延ばしは、ADHDの大人が報告する最も一般的な問題の一つです。治療の対象として先延ばしを定義した後、患者は日常生活での先延ばしの具体的な例を共有することが奨励されます。
具体的なスキルの実装
私たちはまた、タスクの各部分をステップに分ける(「チャンキング」とも呼ばれます)ために、タスクの計画、タスクの構成部分をレビューします。
そして、フォロースルーに影響を及ぼす可能性のある障壁や要因を特定します。
このプロセスの重要な側面は、タスクの見通しに対する個々の認知的・感情的反応を明示的に探ることです。
よくある質問は以下の通りです。
- 「このタスクを実行することについて、どのような思考が頭をよぎりますか?」
- 「このタスクについて考えるとき、どのような感情が浮かびますか?」
- 「このタスクに直面しているとき、あなた自身の肌にいるのはどのような感じですか?」
これらの質問の目的は、先延ばしに寄与する可能性のある否定的な思考と感情の役割を明らかにすることです。
また、「逃避行動」や合理化(例えば、「まずメールをチェックしてから、すぐに仕事に取り掛かる」)を特定することも重要です。
具体的なスキルの実装:具体例
具体的なスキルの実装について、具体例を挙げて説明します。例えば、ある患者が大学のクラスでの論文の執筆を先延ばしにしているとします。
この場合、まずはその論文の最終目標を明確にします。それは「論文を完成させる」ことでしょう。
次に、その大きなタスクを小さなステップに分割します。それは「テーマを決める」「必要な資料を集める」「アウトラインを作る」「各章を書く」「校正をする」などとなるでしょう。これにより、大きなタスクが一見手に負えないものから、一つ一つ取り組める小さなタスクへと変わります。
さらに、各ステップに対する患者の思考や感情を探ります。例えば、「テーマを決める」ことに対して、「何を書けばいいのかわからない」「自分のテーマがダメだと思われたらどうしよう」などの否定的な思考や不安があるかもしれません。
これらの思考や感情が先延ばしを引き起こす原因となっている可能性があります。
このように、認知行動療法では具体的な行動の変化を目指します。それは、問題のある行動パターンを特定し、それを改善する新しい行動を学ぶことを含みます。
このプロセスは、患者自身が自分の行動を理解し、それを変えるための具体的なスキルを身につけることを可能にします。
適切な治療を受けるためのリソース
ADHDの治療には、ADHDに特化した専門家の支援が必要です。ADHD専門のクリニックや病院、またはADHDに詳しい心理療法士を探すことが重要です。
また、ADHDの治療には、薬物治療だけでなく、認知行動療法などの心理療法も有効であるということを理解することも重要です。